サリンジャー「マディソン・アヴェニューのはずれでのささいな抵抗」は、価値観の違いが引き起こす悲劇を描いている。
- 海外文学
掲載日: 2023年07月15日
「マディソン・アヴェニューのはずれでのささいな抵抗」は、1941年に執筆された短編小説。
戦後1946年に「ザ・ニューヨーカー」に掲載されます。
後の1959年に発表され、世界的なベストセラーとなる「ライ麦畑で捕まえて」の主人公ホールデン・コールフィールドが登場する初めての作品です。
「マディソン・アヴェニューのはずれでのささいな抵抗」を、解説します。
寄宿学校に通うホールデン・コールフィールドは、クリスマス休暇を利用してマンハッタンの実家に戻っています。
そして、地元のガールフレンドのサリーとデートし、愛を確かめていきます。
ところが、ちょっとした会話で、お互いの価値観が全く違うことが解ってきます。
ホールデンは、自分を取り巻くすべてが嫌い。
学校も、ニューヨークでの生活も、何もかも嫌いです。
それとは真逆で、サリーは、今の生活にとても満足しているのです。
価値観が違うことを無視するかのように、ホールデンはサリーに結婚を提案します。
嚙み合わなくなる、ふたりの歯車。
そこから、ホールデンの暴走が始まります。
自分の気持ちを分かってもらえなくて自暴自棄になるホールデン。
そんなホールデンを、我がことのように思えた当時の若者の気持ちが、何となくわかるような気がします。
コロンビア大学でサリンジャーに指導をしていたホイット・バーネット教授は、この作品を読んで感銘を受け、これはぜひ長編にすべきだとサリンジャーに進めます。
そしてできたのが「ライ麦畑で捕まえて」なのです。