タイトルの意味が素晴らしい、ロバート・A・ハインライン著「夏への扉」
- 海外文学
掲載日: 2019年06月12日
この作品は、6月に行われたオンライン読書会の課題図書に指定された関係で
高校生の頃に読んだまま忘れていたものを再読してみました。
持っていたのは、福島正実氏訳のものでしたが、新たに出た新訳版を読んでみました。
今から、70年ほど前に発表された名作中の名作です。
友人の裏切りに遭い、不幸のどん底に落とされた主人公が、
タイムトラベルによって 人生を取り戻してゆく、というストーリー展開は、
以降のあまたのSF作品に流用されています。
「バックトーザフューチャー」の元ネタとなったことでも有名です。
主人公は、発明家の青年ダン。
今、彼は不幸のどん底に突き落とされています。
自分が発明した「掃除ロボット」を商品化し、
友人のマイルズと会社を興したとこまではいいのですが
婚約者のベルにも裏切られ、あろうことか、会社からも追い出されてしまったのです。
失意のダンは、今の生活を捨て、冷凍冬眠で未来へ行く決意をします。
で、30年後の世界で彼を待っていたものは・・・。
この作品を読んだ後、「ありきたりの展開だなぁ」とか
「良くあるお話だ」とか、思った人、あなたのその感覚は正しいです。
つまり、それだけ多くの作品が、
この「夏への扉」の設定を模倣していることの証です。
くどいようですが、この作品は今から70年も前に書かれたもの。
この作品が、元祖です(^◇^;)
ハッピーエンドのためには、
どこかで、必ず主人公が不幸のどん底に落ちる必要があります。
その不幸がひどければひどいほど、結末の爽快感はアップするのです。
この展開も、この作品のすごいところです。
読後感が最高です。
が、それにもまして秀逸なのが、
この「夏への扉」というタイトルに込められた意味。
主人公のダンが飼っている猫のピートは冬が嫌い。
真冬に、外に出ようとして扉を開けると、辺りは一面の銀世界。
ここじゃないと言うかのように、ピートは別のドアを開けてくれとせがみます。
そう、ピートは、どこかのドアが、「夏」へ通じていると思っているのです。
かくして
主人公の「ダン」も、「夏への扉」を探す旅へと出ることになるわけです・・・。