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泉鏡花「竜潭譚」は、幼子と共にじわじわと幻想世界へ入っていく物語。

泉鏡花「竜潭譚」は、幼子と共にじわじわと幻想世界へ入っていく物語。

掲載日: 2021年12月07日

「竜潭譚」は、1896(明治29)年、雑誌「文芸倶楽部」に掲載された作品。
幼子がいつの間にやら異世界へ迷い込んでしまうお話。
連作短編になっています。

「竜潭譚躑躅か丘」

姉の止めるのも聞かず、ツツジの咲き誇る丘にひとり来た幼な子。
行ゆく方かたも躑躅なり。来こし方かたも躑躅なり。
あまりうつくしさに恐しくなりて、家路に帰らむと思ふ

が、時すでに遅し。
ツツジのなかより飛びて来た羽虫を殺してしまう。
すると、鱗粉にでも触れたのでしょうか
ほかほかと、かほあつき日向に唇かわきて
眼のふちより頬のあたりむず痒ゆきこと限りなかりき

もう後戻りができないことを暗示させる幻想的な導入部です。
なにやら不気味なことが起こりそうな予感がします。

「竜潭譚鎮守の社」

帰り道がわからない幼子。
日の傾くぞ心細き。肩、背のあたり寒うなりぬ
耳を澄ますと、かすかな子供の声がする。
もういいよ、もういいよ
どうやら、遠くでかくれんぼをしているようです。
夕暮れ時に、かくれんぼは、とても不気味です・・・。

「竜潭譚かくれあそび」

読み進めるにつれ、じわじわと幻想世界へ入っていくのがわかります。
お遊びな、一所にお遊びな
と誘われるままに見知らぬ子供たちとかくれあそびをする幼子。

「もういいよ、もういいよ」と、声したる方をと思ふ処には誰もをらず。
一緒に遊んでいた子供たちは
いつの間にかいなくなってしまう。

ふと気が付くと顔の色白く、うつくしき人がすぐそばに立っていて
その手を懐にして肩を垂れたり。優しきこゑにて、
「こちらへおいで。こちら」

幼子は、疑いもせず、いそいそとついて行ってしまうのです。
や、やばくないですか・・・(;^_^A

「竜潭譚-あふ魔が時」

日も暮れ、途方に暮れる幼子。
うつくしき人に言われるがままに 小さき稲荷の社の裏に身をひそめる。
ふと姉の教えを思い出す。
人顔のさだかならぬ時、暗き隅に行くべからず
たそがれの片隅には、怪しきものゐて人を惑はす
何かが起こりそうでゾクゾクします(;^_^

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