アルベルト・カミュ「ペスト」には、面白い仕掛けがあります。
- 海外文学
掲載日: 2021年09月26日
「ペスト」は、1947年に出版された不条理小説。
疫病であるペストが人々を襲うということを当時のフランスでは不条理とらえていました。
アルベルト・カミュの代表作です。
「異邦人」の無機質な文体とは、まるで違う、とても分かりやすい文体で書かれています。
そして、鼠が死んでいく冒頭のエピソードなど
何かが起こる予感を駆り立ててエンターテイメント的要素たっぷりです。
舞台となるのは、フランスの植民地であるアルジェリアのオラン市。
カミュの生まれ育った町でもあります。
この街にペストが発生し、人々がそれに立ち向かっていく物語です。
読み進めていくと
とても面白い仕掛けがあることがわかります。
物語自体が、どこからともなくこの街にやってきた「ジャン・タルー」という人物が書き残したノートを基に、話が進んでいくのです。
では、いったいこの物語の語り手は誰なのか?と言う謎も残されています。
実に面白い(;^_^A
死亡者の数が増え、症状も「ペスト」の様相を呈している。
にも拘らず、知事らは、ペストとは言いたくない。
市民には大したことではないと伝えようとする。
緊急事態宣言なんてとんでもないと言う、どこぞの政府と酷似しているのですが・・・(;^_^A
おもしろい仕掛けが、もう一つあります。
小役人のグランが、タバコ屋のおかみさんの世間話を聞くエピソードで
おかみさんはこんな話をします。
「ある若い店員が、海岸でアラビア人を撃ち殺したんだって・・・」
これ、「異邦人」のことではないですか!!