安部公房「バベルの塔の狸」は、無意識の願望が具体化していく作品です。
- 日本文学
掲載日: 2021年04月15日
「バベルの塔の狸」は、1951年(昭和26年)、雑誌「人間」5月号に掲載された前衛小説。
雑誌「近代文学」1951年2月号に掲載された「壁―S・カルマ氏の犯罪」、
雑誌「人間」1950年12月号に掲載された「三つの寓話」(「赤い繭」「洪水」「魔法のチョーク」)、
世紀の会刊行パンフレット「世紀群叢書5」に1950年10月に掲載された「事業」
以上の6作品が、単行本「壁」として、1951年(昭和26年)に月曜書房より刊行されました。
詩人である「ボク」が公園のベンチで空想をしていると
猫でもなければ、犬でも、狐でも、狸でもない奇妙な小動物に出くわす。
小動物がゆっくりと近づいてきたかと思うと何かを咥えて逃げ去っていく。
咥えていったものはボクの「影」。
ここから、不条理なお話が始まります。
「影」を無くした「ボク」は体が透明になってしまう。
なんとかして自室に戻った彼は、ふと安堵する。
なぜかというと「消えてしまったボクの輪郭の代わりに壁が皮膚の役目をしてくれる」から。
ここから「ボク」は「影」の考察を始めていきます。
肉体を喪失した彼は何に光明を見出すのでしょう・・・(;^_^A
「影」を咥えて逃げた小動物が言う。
「私の行動や言葉はすべて君の念願なんだ」
つまり
「君は透明になりたかったんだ」
ここから、際限なくシュールな展開となっていきます(;^_^A
まるで夢を見ているような・・・。
そう、無意識の世界です。