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夏目漱石「草枕」は、芸術論が随所に出てくる難解な小説です。

夏目漱石「草枕」は、芸術論が随所に出てくる難解な小説です。

掲載日: 2021年09月01日

「草枕」は、明治39年(1907年)に、文芸誌「新小説」発表された作品。
漱石が、友人と訪れた熊本県の小天温泉での体験を基にしています。

主人公はひとりの画家。
彼の名前は最後まで出てきません。
一人語りが最後まで続くからです。

1漱石の芸術論の幕開きです。

今の生活に嫌気がさした一人の画家が山奥の温泉地にやってくるところから話が始まります。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。
意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい
という書き出しで有名です。
誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

が、なかなか厄介な小説です。
というのも、漱石の芸術論が随所に描かれているからとても難解なのです。
おまけにお話がなかなか進まない(;^_^A

この1章なんて、ほぼ芸術論のみしか描かれていないので
違った本を読み始めたのかな?と思ってしまうこと必至です(;^_^A

2投宿先への予兆を記す。

今晩より投宿する宿の娘の身の上話を聞かされる主人公。
しばらくあの顔か、この顔か、と思案しているうちに、
ミレーの描いた、オフェリヤの面影が忽然と出て来て、高島田の下へすぽりとはまった

それは、オフェリヤが合掌して水の上を流れて行く姿・・・。
いやがおうにも、儚げな運命が感じられてしまいます。

オフェリヤは、「ハムレット」の恋人。
復讐の一念にあるハムレットに父親を殺され、錯乱した挙句、川で溺死してしまいます。

3芸術論、再び。

夜中にかすかに聞こえる歌声。
気になって寝付けず思案を巡らす画家。

ここから、難解な芸術論が始まります(;^_^A
四角な世界から常識と名のつく、一角を磨滅して
三角のうちに住むのを芸術家と呼んでもよかろう
怖いと思う気持ち、すなわち常識を捨て「智」「情」「意」を旨とすべしと言っているのでしょうか。

4宿での「那美」との出会い

さぁ、いよいよ宿の若女将「那美」との出会いです。
これまでは難解な芸術論が続いていますが
時折、息抜きのごとく会話が描かれています。

たとえば、朝餉での下女との会話。
「うちに若い女の人がいるだろう」と椀を置きながら、質問をかけた。
「へえ」
「ありゃ何だい」
「若い奥様でござんす」

女性が使う「ござんす」という言葉。
これが、とても風情があっていいんです。

5ここから先が本題。

寂寥感の漂う寂しげな宿で物憂げにたたずむ画家。
一陣の春風をこんな風に表現しています。
空しき家を、空しく抜ける春風の抜けて行くは迎える人への義理でもない。
拒むものへの面当てでもない。自ずから来たりて、自から去る、公平なる宇宙の意こころである

こんな文章、文豪以外に誰が書けるでしょうか(;^_^A

これまでのパートで描かれてきたのは、漱石の芸術に対する考え。ここから先は、登場人物のエピソードを通して、漱石が思う芸術論を描いていきます。
主人公が画家ということもあり絵画への想いと見せかけて
実際は「文学」への想いを描いているような気がしています。

さぁ、アナタはいったい何を感じ取ることができるでしょうか。
読み終わった後あなたの心に残るものは何でしょうか。

この作品は、読んだ後、何を感じたかを語り合うにはもってこいの作品。
課題本にして、読書会でぜひ語り合いたいものです。

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