安部公房「壁-S・カルマ氏の犯罪」は、自己の喪失という「カフカ的」絶望を味わえます(;^_^A
- 日本文学
掲載日: 2021年06月25日
「壁」は、1951年(昭和26年)に月曜書房より刊行された前衛作品。
第25回芥川賞を受賞しています。
————
ある朝、「名前」に逃げれた男が現実での存在権を失い、裁判にかけられ、ありとあらゆる罪を着せられてしまう。
挙句の果てに壁に変身していく、という物語。
この作品は、6月26日に行われるオンライン読書会、解説付き「本コミュ」読書会 vol55テーマ「安部公房 」で、取り上げるため、再読してみました。
————-
「壁」の冒頭には、安部公房の師でもある小説家、石川淳氏の序文があります。
この不思議な作品を読む前に、まずは、この序文を読む必要があります。
なぜなら、この序文には作品を読み解くヒントがあるからです。
曰く…
「壁」とは、なんであるか。
空間を仕切るものではない。
むしろ、安部君の手によって世界が開かれる。あなたの運命が描かれていくんです。
安部君がそこに表現を与えるからです。
では、読み進めていきましょう・・・。
目を覚ますと胸が空っぽになったように感じる主人公。
なぜかというと「名前」を失っていたからです・・・。
彼がいつものように出勤すると、
自分の席にはもう一人の自分が座っています。
もう一人の自分とは何か。
それは、すなわち「名刺」です。
ここから、「カフカ的」な悪夢が始まります。
名刺は、出社した「ボク」にこう告げます。
「君はここに何しにやってきたんだ?
君なんかのでしゃばる場所じゃない」
名刺にこんなことを言われた日には底知れぬ屈辱と絶望が広がってきます・・・。
名前を失った主人公は地下深くにあるホールに連れていかれます。
ここで、彼は裁判にかけられるのです。
証人となるのは、彼がこれまで出会ったことのある人々。
続々と入ってきます。
行きつけの食堂の少女。
職場のタイピスト、同僚たち。
ついさっき出会った画家。
そして、死んだ妹や母親までいる。
ここから想像を超えた裁判が行われますので、心して読み進んでください(;^_^A
どうです?
なんだか、いや~な気持ちになってきませんか?(;^_^A
まだ100ページほど、続きますが(^_^;)