
三島由紀夫『金閣寺』は、究極の人間の複雑な心の動きを描き切る。
- 日本文学
掲載日: 2020年08月19日
1950年に、実際に起きた「金閣寺放火事件」がその題材です。
主人公は、金閣寺の修行僧である溝口。
彼は「金閣寺」を、美の象徴、畏怖するものとしてとらえています。
崇拝してやまない「金閣寺」を、彼は放火するのです。
では、なぜ、彼が放火してしまうのか。
全330ページのほぼすべてを使って、溝口の心の動きを描き出していきます。
人の行動というものは、単純ではありません。
ボクは、昨日、かみさんとケンカしましたが
ケンカに至るには、さまざまな原因が積み重なっっています。
チョットは片付けてほしいなぁとの思いが、燻り続けてきたこと。
かみさんが、その日、またしても片付けなかったこと。
そして、その日やたら暑かったこと。
そういったことが、複雑に絡み合って大ゲンカが勃発するわけです(;^_^A
ちょっとしたケンカだけでも、さまざまな要因が複合的に積み重なった結果のことです。
ましてや、畏怖すべき対象である「金閣寺」を放火する・・・。
そこに至るまでの、気の遠くなるようなエピソードの積み重ねで
読み手が唸ってしまうほどの納得感を描き出しています。
まさに、
三島由紀夫が天才といわれる所以です。
