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大いに誤解されているメアリーシェリー『フランケンシュタイン』。その読み解き方を解説します。

大いに誤解されているメアリーシェリー『フランケンシュタイン』。その読み解き方を解説します。

  • 海外文学

掲載日: 2026年05月10日

多くの人が思い浮かべる「フランケンシュタイン」は、きっとこんな風体の怪物だと思います。

でも、これは多くの人の勘違い (;^_^A
「フランケンシュタイン」は、怪物の名前ではなく、怪物を作った科学者の名前なのです。
メアリー・シェリーの小説『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』は、科学者フランケンシュタイン博士と、彼が創造した怪物の織り成す、恐ろしい悲劇を描いています。

とここまで聞くと、よくあるホラー小説のたぐいだと、思う方もいらっしゃるでしょう。
いや、確かにこの作品は、ゴシックホラーではあるのですが、それだけにとどまらない大傑作なんです。
では、具体的にどんなお話かを見ていきましょう。

フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウスは、こんな小説です。

フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』は、1818年にロンドンで出版された小説。
作者は、弱冠19歳の女性、メアリー・シェリーです。この作品は、とても凝った仕掛けがしてあります。
起こった出来事を、当事者が語って聞かせるという形式、書簡体形式で描かれているのです。

フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウスのあらすじ。

物語は、こんな風に始まります。
それは、北極を目指して航海しているイングランドの青年ウォルトンが姉のマーガレットに向けて書いた手紙の一文です。

そこにはこんな記述があります。
「氷上を、人間の形はしているが見るところ背丈の巨大なものが、犬ぞりに乗って北に向かっているのを発見した」と。
望遠鏡で追ったが、その姿ははるか遠くの氷の間に見えなくなった、というのです。

そして、翌日に別の犬ぞりに乗った男を発見し、船に助け上げます。
その助けた男こそ、フランケンシュタイン博士。
彼は、先の犬ぞりに乗った「巨大なもの」を追っているというのです。

ここから、フランケンシュタイン博士に起こった、驚くべき出来事が語られていきます。
彼は、生命の仕組みを解明すべく、死体をつなぎ合わせて作った体に命を吹き込んで蘇らせたというのです。
けれども、作り上げたはいいが、その醜い姿に恐怖を感じ、遺棄してしまいます。
遺棄された怪物は生き延び、再びフランケンシュタイン博士のもとを訪れます。

遺棄された後、どれほどひどい目にあってきたかをフランケンシュタイン博士に語る怪物。
醜い容姿の故、迫害されてきたのです。
なぜこんな醜い姿にしたのかと嘆き苦しむ怪物。
そして、復讐の憎悪に燃えるようになるのです。

紆余曲折があり、フランケンシュタイン氏は、怪物の後を追っていたというわけです。

フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』を解説します

この作品の作者、メアリー・シェリーの人生を辿っていくと、『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』という作品は、彼女の人生そのものだということが解ります。

作者メアリーシェリーの波乱万丈な人生。

メアリー・シェリーは、作家でもある両親の影響で本に囲まれて育っています。
また、物語を作るのが好きで、いつも構想を練っては書き留めていました。
小説を書く環境は整っていたわけです。

メアリー・シェリー・

生みの母親が死んだ後、父親が再婚した継母からは
女性が書き物をすることを咎められています。
それゆえ、妻子ある詩人シェリーと駆け落ちをすることになるのです。
そこでは、生活苦から実施を死なせたりと、人生のどん底を味わうことになります。
苦悩を身をもって体験するのです。

そして、イングランドから、フランスやスイスへと各地を転々する実体験が、
物語の中でフランケンシュタイン博士と怪物の追いつ追われつの描写に生かされています。

ミルトンの『失楽園』のモチーフ

最初は、穏やかな優しい存在だった怪物は、幾多の迫害を受けるうちに邪悪な存在になっていきます。
創ってくれと頼んだわけでもないのに勝手に創り、その挙句、醜いからという理由で、捨てられてしまう。復讐を誓った怪物は、フランケンシュタインに苦悩を味合わせるために、彼の周りにいる人々に危害を加えていくのです。

これは、作中で怪物が読む、ミルトンの『失楽園』で描かれたモチーフと一緒です。

優しい存在だった天使ルシファーは、神の奴隷であることに目覚めます。
望んで生み出されたわけではない。奴隷であることよりは自由であることを望むのです。
さらには、新たな創造物であるアダムとイブにリンゴの実を食べさせてしまい、自我を目覚めさせます。アダムとイブは、神に飼われていたかのような状況に目覚め、楽園を追放されていくのです。
これは、まさに怪物が置かれている境遇と全く同じではないですか。

もう一つ大事なことがあります。
望んで生み出されたわけではない存在。これは、私たち人間そのもののことでもあります。

「プロメテウス」のこと

この作品が書かれた1800年初頭は、産業革命真っただ中。
いろんな科学技術が身の回りには、あったのです。
カエルの死体に電気を流すことで筋肉を動かす実験なども行われていました。
それを見たメアリーシェリーが、死体を繋ぎ合わせて怪物を作ったらどうなるんだろうと思いついたのではないでしょうか。

プロメテウスは、神ゼウスに禁止されていたにもかかわらず、人間に火をもたらしました。
人間は、科学技術を生み出すまでに進化し、神を冒涜するようになるのです。
それゆえゼウスの逆鱗に触れ、鎖で縛られてしまいます。

副題の「現代のプロメテウス」とは、フランケンシュタイン博士を指すのでしょうか。

出版に至るまでのこと

当時のイングランドでは、女性が仕事をすることを良しとしない風潮があり、小説を書くことも歓迎されるものではありません。
そのため、どこの出版社からも印刷を断られました。

ロンドンの小さな出版社から印刷ができることになるのですが、
条件が付けられます。
それは、夫で高名なロマン派の詩人であるシェリーの序文を冒頭に記載することと、女性であることを隠すために作者名は匿名にすること。

斯くして、初版が出版されることと相なるのです。

さぁ、ここまでの背景知識を知ったあなた。
これで、この驚くべき小説の本文を読み進めていく準備が整いました。
この先は、ぜひ実際に読んでその内容をご堪能ください。

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