宮沢賢治著「注文の多い料理店」は、必ず「序文」を読むこと。
- 日本文学
掲載日: 2020年08月01日
宮沢賢治の存命中に刊行された本は、二冊のみ。
それも自費出版です。
あまりにも内容が特異すぎて、どの出版社からも断られたのです。
一冊は、詩集「春と修羅」。
最愛の妹との別れを描いた『永訣の朝』が有名です。
そして、もう一冊が、童話集「注文の多い料理店」。
不思議な不思議なお話が収められています。
賢治が、花巻の「林や野はらや鉄道線路やら」を
歩き回って「もらってきた」お話です。
本文を読む前に、まずは「序文」を読む必要があります。
なぜなら、これらのお話をどうやって描いたかが
賢治自身の文章で記されているからです。
決して速読なんぞで読んではイケマセン。
じっくりと「序文」の文章を、行きつ戻りつして読むと
賢治の不思議な創作の様子が見えてきます。
たとえば・・・。
賢治曰く、「わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、
きれいにすきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます」
そう、賢治は、「風」を感じるだけではなく「たべ」、
「日光」を見るだけではなく「のむ」ことができます。
賢治曰く、「これらのわたくしのおはなしは、
みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらってきたのです。
ほんとうに、かしわばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかったり、
十一月の山の風のなかに、ふるえながら立ったりしますと、
もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。
ほんとうにもう、どうしてもこんなことがあるようでしかたないということを、
わたくしはそのとおり書いたまでです」
かくして、人智を超越した不思議な不思議なお話が
ここから始まります。