夏目漱石「夢十夜-第七夜」(西へ向かう見知らぬ船に乗っている話)は、西洋化に対する不安な心情を描き出す-朗読13
- 日本文学
掲載日: 2023年02月16日
「夢十夜」とは。
「夢十夜」は、1908年(明治41年)に『朝日新聞』に連載された連作短編小説。
10話からなる、不思議な「夢」を語る幻想的な作品です。
朗読にピッタリの長さの作品です(;^_^A
リアルな「作り物」を旨としている漱石らしく、実に不思議なお話。
そして、ただの空々しい幻想的な物語ではなく、
生き生きとしたリアリズムにあふれています。
今回お届けする朗読は、夏目漱石「夢十夜」の第七夜。
西へ向かう船に乗る男。しかも乗客は見知らぬ異国の人ばかりです。そんな状況に置かれた男の不安を描いた物語。漱石が何を言いたかったのか、解説します。
「夢十夜-第七夜」を解説します。
「第七夜」は、漱石が苦々しく感じていた「西洋化」を踏まえると、漱石の言いたいことが浮かび上がってきます。
では、冒頭から見ていきましょう。
何でも大きな船に乗っている。この船が毎日毎夜すこしの絶間なく黒い煙(けぶり)を吐いて浪(なみ)を切って進んで行く。凄じい音である。けれどもどこへ行くんだか分らない。
夏目漱石「夢十夜-第七夜」(青空文庫)
ふと気が付くと、どこへ行くんだか分らない大きな船に乗っている、というのです。
そして、
ただ波の底から焼火箸のような太陽が出る。それが高い帆柱の真上まで来てしばらく挂(かか)っているかと思うと、いつの間にか大きな船を追い越して、先へ行ってしまう
夏目漱石「夢十夜-第七夜」(青空文庫)
「落ちて行く日を追懸るようだから」どうやら、「西」に向かっているようです。
不安でしかたがない・・・。その後も、不安を描く記述が続きます。
で、この船に同乗している人はと言うと・・・、
乗合はたくさんいた。たいていは異人のようであった。しかしいろいろな顔をしていた。
夏目漱石「夢十夜-第七夜」(青空文庫)
異国の人に囲まれているようです。不安要素に満ち溢れています。
こんな船にいるより、いっそ身を投げて死んでしまおうかと思った。
夏目漱石「夢十夜-第七夜」(青空文庫)
漱石の不安な気持ちがよく表れています。
そして、キリスト教を示唆するような箇所も出てきます。
異人が金牛宮の頂にある七星の話をして聞かせた。そうして星も海もみんな神の作ったものだと云った。最後に自分に神を信仰するかと尋ねた。自分は空を見て黙っていた。
夏目漱石「夢十夜-第七夜」(青空文庫)
西洋化にひた走る明治の日本を苦々しく思っていた漱石。
西に向かう船・・・。
なんとなく、漱石の意図するところが伝わってくるような気がします。
抽象的な表現が多いので、いろんな解釈ができそうです。
読書会などでぜひ、皆さんの解釈を聞かせていただきたいですねぇ。
そんな不思議な物語を朗読と映像で表現してみました。