川端康成の本質に触れることができる、川端康成著「片腕」
- 日本文学
掲載日: 2020年12月01日
「片腕」は、1963年(昭和38年)に文芸雑誌「新潮」に連載された短編小説。
タイトルからして、多くの方はギョッとすることでしょう。
まだ、川端作品を読んでいない人にとって、「川端康成」という作家についての第一印象は、「雪国」「伊豆の踊子」などの清らかなタイトルから
清らかで美しい純文学を描く作家、というイメージだと思います。
確かに文章は美しい。
ただ、その内容が美しいとは限らないのです。
「片腕」というタイトルから、どんな小説を想像できるでしょうか。
これは、愛する人の「片腕」を借り受けるお話。
こんな出だしで始まります。
「片腕を一晩お貸ししてもいいわ」と娘は、右腕を肩からはずし、「私」の膝に置いた。
義手のこと?と思われるやもしれません。
いえいえ、義手ではありません。生身の腕です。
自分の腕を外して、男に貸し出すのです。
借り受けた男は、一晩、その腕を愛でるという
とてもシュールで耽美なお話です。
多くの人が抱く川端康成のイメージが崩れ去る作品だと思いますが
これこそが川端康成の世界なのです。