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太宰治「ロマネスク」は、芥川張り「戯作」の大傑作です。

太宰治「ロマネスク」は、芥川張り「戯作」の大傑作です。

掲載日: 2022年12月09日

「ロマネスク」は、1934(昭和9)年に、同人誌「青い花」に発表された小説。
3編の物語、「仙術太郎」「喧嘩次郎兵衛」「嘘の三郎」で構成される連作短編集です。

時は江戸。特異な技を会得した若者が辿る皮肉な運命を描いています。
太宰治自身の人生を描く、重苦しい私小説的な作品とは違い、
江戸時代の戯作のような、ユーモアあふれる実に面白いお話です。
そう、まさに太宰が傾倒していた芥川龍之介の作品を彷彿とさせる作品なのです。

そして、実に巧妙な仕掛けが仕組まれています。
これこそ、太宰が「新戯作派」と呼ばれる所以でしょう。

仙術太郎

主人公は、庄屋の息子の太郎。
生まれた時からの変わり者で、母親から乳をもらうとき、
乳房にもみずからすすんでしゃぶりつくようなことはなく、
口をたいぎそうにあけたまま乳房の口への接触をいつまででも待っていた。
そんな横着な子供でした。

青年になった頃、太郎は毎日のように蔵の中にはいって父親の蔵書を手当り次第に読んでいました。
そのうちに仙術の本を見つけ、一年ほども修行して、ようやく法を覚えこんだのです。

十六歳になった太郎は恋をし、
仙術でもって、美男になるように念じはじめます。

さて、太郎の運命や如何に・・・。
努力に努力を重ね仙術を体得した結果、どうなってしまうのかというお話です。

「喧嘩次郎兵衛」

主人公は、造り酒屋の次男坊の次郎。
彼は、曲がったことが嫌いが故に、実にけんかっ早い暴れ者。
来る日も来る日も、喧嘩上手になるべく修練を積むのです。

その結果、当代随一の喧嘩上手となったのですが、
彼にも皮肉な運命が待っていたのです。

「嘘の三郎」

主人公は、深川に住む学者の息子の三郎。

彼は、ある出来事がきっかけで嘘をつくことが常態化します。
嘘の技術に磨きがかかってゆき、
ついには、詐欺まがいの指南書を出版するまでになるのです。

そして、ある日、三郎は、こんなことを思います。
嘘は酒とおなじようにだんだんと適量がふえて来る。
ふとその言葉がいまはじめて皮膚にべっとりくっついて思い出され、苦笑した。
ああ、これは滑稽の頂点である。
今日より嘘のない生活をしてやろうと。
しかし、彼にも報われない運命が待っています。

さて、ここからが面白い。
自暴自棄になった三郎が、朝っぱらから酒でも飲もうと思って居酒屋に行く。
すると、
「縄のれんをはじいて中へはいると、この早朝に、もうはや二人の先客があった。驚くべし、仙術太郎と喧嘩次郎兵衛の二人であった。」
実に凝った展開です。
3つの物語の主人公3人が、出会うのです。

さて、3人はどんなことを話すのでしょう・・・。
この物語の3人が3人とも、苦労に苦労を重ねて、技術を体得するのですが
結局は予想だにしなかった皮肉な運命が待っていることになるのです。
世を儚んでいる太宰の心境が投影されているように思えてしまいます(;^_^A

タイトルの「ロマネスク」とは、いったい何でしょうか。

「ロマネスク」とは、建築や美術の様式の一つ。「ローマ風の」という意味です。

その昔、西ローマ帝国は、ゲルマン民族に征服されます。
ゲルマン民族は、自然を崇拝し、素朴な生活を営む蛮族。
自らの文字や文化を持たない民族でした。
そのため、征服した西ローマ帝国の建物や絵画を、見よう見まねで作って都市を創っていきます。
「ローマ風」に創作したということで「ロマネスク建築」「ロマネスク美術」と言うのです。

憧れのローマ帝国の芸術を模倣したゲルマン人。
芥川龍之介の戯作を模倣した、太宰治、ということなのでしょうか。

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