無機物へ愛という耽美的世界を描く、村田沙耶香「消滅世界」
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掲載日: 2020年02月15日
小説というものは、少なからず作者の生き方を反映しているものだと感じています。
谷崎潤一郎は、ドロドロの男女の修羅場をくぐってきたが故に
「春琴抄」や「卍」のような、究極の愛の「形」を描いています。
川端康成は、永遠に得ることができないものへの憧憬があるが故に
「眠れる美女」や「みずうみ」のような、究極の偏愛の「形」を描いています。
で、村田沙耶香の描く世界を見てみると・・・。
舞台は、近未来の日本。
そこでは、夫婦間の性交渉は、近親相姦に近いものとして忌み嫌われている世界。
「恋愛」というものを「清いもの」ととらえるならば
その行きつく先は、正反対の肉体関係という「穢れたもの」
ひいては、性欲すら「穢れたもの」として、排除していき、世の中を「クリーン」なものにしていく世界。
そこには、夫婦間の性交渉ですら、「穢れたもの」として忌み嫌われているわけです。
その世界では「家族」という関係すら希薄になっていき
「ヒト」との恋愛も煩わしいと感じる人々は二次元のキャラクターとの恋愛に嵩じるのです。
「コンビニ人間」では、「コンビニ」という無機物に共鳴して生きていく女性を描いていましたが
「消滅世界」は、ケタ違いに無機的です。
作者の人生観が、色濃く描き出されているとすると、
いい意味で、なかなかすごいものを感じてしまいます(;^_^A