葛城夫人の凛とした乗馬姿に酔いしれる、三島由紀夫「遠乗会」
- 日本文学
掲載日: 2022年11月14日
「遠乗会」は昭和25年に別冊文藝春秋に発表された作品。
三島由紀夫は、乗馬クラブにて乗馬をたしなむが、その経験を基にこの物語を創作しています。
三島由紀夫自身の解説によると
「遠乗会の描写そのものは、自分 も加わったパレス乗馬倶楽部の遠乗のスケッチであって、そういう実際の何ら劇的でない経験の微細なスケッチに、 何らかの物語を織り込むというやり方は、今にいたるまで 私の短編小説 製作の一種の常套手段になっている」
自身の乗馬経験を基に、紡ぎだした物語というが、それにしては、繊細で深い物語の様相を呈しています。
主人公は、美しき上流階級の女性、葛城夫人。
愛する我が子をたぶらかした女を一目見ようと、その女が参加する乗馬の遠乗り会に自ら出向く。果たして、その娘に相まみえることになるのだが・・・、という物語。
乗馬服に身を包んだ葛城夫人の様子が、まずは美しい。
「その優雅な和紙のような肌は、おしろいを要せぬほどに匂いやかに白い」
とても繊細なお話ですが、なによりも文章自体が繊細極まりないのです。
宝石のような文章表現を味わうだけでも読む価値があると思います。
美しく描かれるのは、葛城夫人だけではありません。
彼女が以前、結婚を拒んだ男性、由利氏。
遠乗り会で、出会うことになるのですが、その颯爽たる乗馬の様子が美しいのです。
もはや、この作品は、乗馬の凛とした美しさを描くためにあるような気がしてきました(;^_^A