森鴎外の短編小説「カズイスチカ」には人生の極意が描かれている。
- 日本文学
掲載日: 2022年07月18日
「カズイスチカ」は、明治44年(1911年)に「三田文学」に掲載された小説。
「カズイスチカ」とは、「臨床記録」を意味するラテン語です。
ここで描かれるのは
鴎外自身が若かりし頃、診療の教えを請うた熟練の医師である父の生きざま。
大学で最新の学問を学んだ鴎外は、父よりも理屈だけは秀でている。
がしかし、どうしても、父には及ばないことがある。
例えば
「この病人はもう一日は持たん」と父が云うと、その病人はきっと二十四時間以内に死ぬ。
それが彼にはどう見ても分からなかった。
鴎外は言う。
只これだけなら、経験の上で及ばないと云うに過ぎないが、実はそうでは無い。
及ぶべからざる処が別に有ったのである。
それは、日常生活にこそあった。
鴎外が、目前の事をいい加減に済ませて行くのに反して、
父はつまらない日常の事にも全幅の精神を傾注している。
日常の些末なことに対しても全幅の心構えで向き合うなら、
ましてや病人に対しては、ということである。
できる人は、日常からして違うのである(;^_^A