堀江敏幸「雪沼とその周辺」は、文章の美しさで読ませる。
- 日本文学
掲載日: 2018年07月21日
この作品は、7月に行われたオンライン読書会の課題図書に指定された関係で
初めて読んでみました。
とある片田舎の小さな町「雪沼」。
そこに住む人々の人間模様を描いた7編からなる短編集。
たとえば、
今日で閉店を迎えるボーリング場の閉店間際の様子を描いた「スタンス・ドット」
主人公が、なぜボウリング場を開くことになったか、
そして、閉じるに到った悲喜こもごもの事情を、
閉店30分前に訪れた見知らぬ男女とのやり取りを通して描いていきます。
波瀾万丈の人生があるわけでもなく、
どろどろの不倫が描かれるわけでもなく、
時空を超える奇想天外な設定があるわけでもありません。
また、
登場人物が泣き叫んで、「世界の中心で」力ずくで悲しみを誘う・・なんてこともなく、
ただ、淡々と人々の暮らしが描かれていきます。
だから、面白いかと問われれば、
スリリングで、ワクワクするような面白さはないわけで・・・(^_^;)
ところが、ところが
文章が実に美しい・・・。
人間模様の、細かい感情のひだのようなものを
素晴らしく美しい日本語で描き出しているのです。
それこそ、川端康成の文章を彷彿させるやもしれません。