朗読コンテンツ01ー泉鏡花「夜釣り」
- 日本文学
掲載日: 2022年07月07日
本コミュ読書会のメンバーによる朗読コンテンツの第一弾は
泉鏡花の「夜釣り」です。
泉鏡花「夜釣」は、得体のしれない怖さがある作品です。
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この小説は、明治44年(1911年)に、文芸雑誌「新小説」に発表されたもの。
大傑作「夜叉ヶ池」が発表される二年前。
泉鏡花が38歳の頃の作品です。
【あらすじ】
無類の釣り好きの亭主が夜釣りに行くが、行ったきり帰ってこない。
待てど暮らせど帰ってこない。
そうこうするうちに幼子が不思議なことを言い出します。
「ウナギが手桶の中にいるよ・・・」
ふと、見ると
ばちやり、ばちやり、と音がする。
ウナギが女房の蒼白い顔を熟じっと視る。
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不思議な文章と相まって、とても不気味なのです(;^_^A
本文には、意味の分かりにくい表現が出てきますので少し解説しておきます。
〇「女房は、まだ若いのに、後生願ひで、おそろしく岩さんの殺生を気にして居た」
ここで言う「後生願ひ」は、泉鏡花の作品によく出てくる言葉。
信心深い人は、死んだ後に極楽に行けるように願っているものです。
死んだ後の世界を後生といい、それを願うということでしょう。
〇この物語の季節は「霜月」
霜が降るようになる時期のことを表し、いまでいうところの11月のことです。
現代では数字を使って月を表します。
これは、明治から行われてきたもので
明治以前は、季節感がわかるような漢字を使って月が表現されていました。
12月は、皆さんがよく知っている「師走」ですね。
〇「ちやうど来なすつた時、目白の九つを聞きましたが云々」
この「目白の九つ」にはかなりの省略があります。
「目白」は「目白不動」を指し、「九つ」の鐘が鳴ったと言っているのです。
つまり深夜0時になったことを意味します。
目白不動から神楽坂までおよそ4kmなので、鐘の音は聞こえる距離なのです。
静まり返った深夜ですから。なおさらよく聞こえます。
当時の人には当たり前のようにわかることなのでしょう。
〇「廂合」
岩治が住む家は、何所帯もが暮らす長屋です。
その廂(ひさし)が重なり合っている隙間から星の光が差し込んでいるわけです。
〇そして、文末には、本文とは全く関係のない以下の一文が添えられています。
「山東京伝が小説を書く時には、寝る事も食事をする事も忘れて熱心に書き続けたものだが、
新しい小説の構造が頭に浮んでくると、真夜中にでも飛び起きて机に向つた。
そして興が深くなつて行くと、便所へ行く間も惜しいので、便器を机の傍に置いてゐたといふ事である」
なぜ、こんな文章が添えられているのか。
ここには、チョットした理由があるのです。
そんなこんなを、
「朗読」と「文字アニメーション」で表現してみました(;^_^A
こちらは、その予告編動画。