フランツ・カフカ著「審判」は、最悪の不安が描かれ、思いつく限りの最悪の結末が待っています。
- 海外文学
掲載日: 2023年01月21日
「審判」は、カフカが1914年に執筆した作品。
存命中は発表されず、没後の1925年に友人のマックス・ブロートによって発行されました。
第一章「逮捕」
主人公ヨーゼフ・Kは、銀行員。
ある朝、目覚めると、見知らぬ男が部屋に入ってくる。
どうやら彼は「逮捕」されるようである。
なぜ、私は「逮捕」されなければならないのか・・・。
訪問者に尋ねても、要領を得ない答えが返ってくるばかりである。
とにかく、あなたは「逮捕」されるのだと言う。
とはいうものの、出かけてもいいと言う。
で、私はいつものように仕事へ行く・・・。
その日を境いに、ヨーゼフ・Kは、なぜ自分が「逮捕」されるのか、
そして自らの「審理」の行方を探し回る日々を送ることになる。
第二章「最初の審理」
「逮捕」された私は審理を受けることとなる。
指定された建物の入り口の階段では大勢の子供が遊んでいる。
かき分けて入っていく私を、こどもたちはにらみつけている。
審理が行われる部屋がわからない。
「こちらです」と、たらいで洗濯をしている女が案内してくれる。
この物語を書いたカフカの心境や如何に。
悪夢のような不条理な展開が、さらに後の章でも続きます(;^_^A
この物語の執筆した当時、カフカは役所での仕事に追われ、さらに恋人フェリーツェ・バウアーとの婚約で執筆が立ち行かなくなる恐怖で忸怩たる思いをしていた頃。
おもしろいように、当時のカフカの心の叫びと重なって見えてきます。
それにもまして、当時の社会状況も不安の大きな原因となっています。
ヨーロッパ諸国では、ユダヤ人差別の土壌があります。
世論如何では、焼き討ち、暴力など何が起こるかわからない状況での生活です。
ユダヤ人であるカフカの不安は計り知れなかったのです。
そして、結末が描かれる最終章は僅か7ページ。
思いつく限りの最悪の結末が待っています。
カフカにとっては、もはや出口はなかったのでしょうか。