
ウィリアム・フォークナーの「エミリーにバラを」は、フォークナーが手向ける憐憫の気持ちなのでしょうか。
- 海外文学
掲載日: 2025年03月29日
「エミリーにバラを」は、1930年に雑誌「フォーラム」に掲載された短編小説。
フォークナーの作品は、アメリカの南部、それもディープサウスと呼ばれる南部気質の濃厚な地域(ルイジアナ州、ミシシッピ州、アラバマ州、ジョージア州、サウスカロライナ州)が舞台となっています。
彼の地では奴隷制度が長く続き、土俗的な因習が営われている閉鎖的な土地柄です。
そんな土地で起こるグロテスクなまでに陰鬱で暗い物語が描かれていきます。
「エミリーにバラを」のあらすじ
主人公のミス・エミリー・グリアソンは、アメリカ南部の州、ミシシッピーのジェファーソンの名士の家に生まれ育った女性。
そんな女性が、74歳の時に亡くなります。
長い間、人目に触れることのなかった彼女の家を一目見ようとし、葬儀の日には多くに人々が訪れます。
語られる彼女の人生。そして、屋敷の最深部にある開かずの扉がついに開くことになるのです。
そこで人々が見たものは一体何だったのでしょう。
「エミリーにバラを」を解説します。
この小説は、全部で5つのチャプターに分かれています。
順番に読み込んでいきましょう。
チャプター1
舞台は、1930年代のアメリカ南部、ミシシッピー州のジェファーソンという町です。
「ミシシッピー州のジェファーソン」は、フォークナーの作品では繰り返し登場するおなじみの場所です。
古くからの町の名士である家で生まれ育ったミス・エミリー・グリアソンが74歳にして亡くなり、その葬儀が執り行われることから、この物語が始まります。
葬儀には、町中の人々がこぞって参列します。
それにはある理由があったのです。
彼女が人々から愛されていたわけではありません。
むしろ疎まれていたと言った方がいいでしょう。
では、いったいなぜ?
彼女に家は、1870年代に建てられた豪勢な邸宅です。
1870年代、つまりビクトリア朝の建築様式で建てられたわけですから、絢爛豪華な作りになっていることが伺えます。

そんな邸宅ですが、これまで誰一人として中を見た人はいないのです。
なぞに包まれた邸宅を一目見ようと人々は参列したのです。
チャプター2
ここから、謎に包まれた彼女の人生が描かれていきます。
エミリーの父親が亡くなり、恋人が彼女のもとを去った後は、彼女は外出をしなくなります。
町の人が目にするのは、買い物かごを持って出入りする黒人の召使いの若者だけでした。
町の人々は、彼女を「気の毒だ」と思い始めたのがこの頃です。
ここでは、彼女の異変を示唆するようなエピソードが描かれますので、その点を考慮に入れて読み込んでみてください。
チャプター3
そんなある日のこと。町の歩道の舗装工事のために、北部から一人の男がやっていました。
現場監督としてやって来た男の名は、ホーマー・バロン。
そんな一介の労働者であるホーマーと馬車で出かけるようになったエミリーを町の人は目にするようになります。
町の人はエミリーにさらに憐れむようになります。
両家の子女であるエミリーが労働者の男と付き合うなんて「かわいそうなエミリー」と。
そんなある日のこと。
エミリーが薬局にやってきます。毒薬を所望しているのです。
これは一体何が起ころうとしているのでしょうか。
町の人と同じように読者も不安になってきます。
チャプター2で描かれたエミリーの人物像が何かを物語っているからです。
チャプター4
仲睦まじくなるホーマーとエミリーの様子を町の人々は、安堵の気持ちを込めてみています。
ところが・・・。
チャプター5
エミリーの葬儀の日に話が戻ります。
そこで町の人々が目にしたものは何だったのでしょうか。

この小説のタイトル「エミリーにバラを」にある、「バラ」は最後まで作品には出てきません。
では、なぜこのタイトルなのでしょうか。
これは、エミリーに同情したフォークナーからの贈り物。
「バラの花ぐらい贈らないと、エミリーがあまりにもかわいそう」ということからつけられたタイトルなのです。