多和田葉子「献灯使」は、ながら読みができるような柔な作品ではない。
- 日本文学
掲載日: 2019年07月24日
「献灯使」は、2014年10月31日に講談社より刊行されたディストピア小説。
全米図書賞を受賞しています。
この題名から、この小説がどんな物語なのかは、皆目、見当がつきません(^◇^;)
そして、舞台がどこで、どんな状況なのかも、わからないまま読み進めていくうちに
薄皮を一枚づつ剝すかのように、状況が少しづつわかってきます。
舞台は、どうやら近未来の日本。
ある「震災」が起こり、国土は汚染され、もはや自然の恵みは無くなっている世界のようです。
汚染物質の影響なのか、若年層ほど体力が衰え、介助なしでは生活できないようです。
そして、介助を担うのが、汚染の影響を受けていない老人たちです。
この小説は、ながら読みができません。
なぜなら、この世界で起こっている状況を微に入り細に入り描いていく描き方が尋常ではないからです。
文章に集中して、想像力を働かせないと、完全に置いてけぼりを食ってしまい、
何がなにやらわからなくなってしまうことでしょう(~_~;)
この作品は、ストーリーの面白さで読ませる作品ではありません。
作品世界のディテールを描く独特の文章表現が、この作品の面白さのようです。