言い知れぬ悲壮感が漂う、国木田独歩「源叔父」
- 日本文学
掲載日: 2022年10月12日
「源叔父」は、1897年(明治30)に雑誌「文藝俱楽部」に掲載された小説。
国木田独歩の最初の作品です。
「源叔父」の舞台は、大分県佐伯市。
この頃、国木田独歩は、大分県の佐伯市に居を構えています。
「都より一人の年若き教師下りきたりて佐伯の子弟に語学教うることほとんど一年」
冒頭の文章に、東京から、一人の教師が佐伯に教鞭をとりに来たとあります。
これは、まさに国木田独歩自身のことでしょう。
その若き教師が下宿先で聞かされた「源叔父」の身の上話がこの物語の骨子になっています。
源叔父は、どんな人なのでしょうか。
「そのころ渡船おろしを業となすもの多きうちにも、源が名は浦々にまで聞こえし。
そは心たしかに侠気ある若者なりしがゆえのみならず、べつに深きゆえあり、
げに君にも聞かしたきはそのころの源が声にぞありける。
人々は彼が櫓こぎつつ歌うを聴かんとて撰びて彼が舟に乗りたり。
されど言葉すくなきは今も昔も変わらず」
源叔父は、渡し舟の船頭。
男気のある人物でその名は津々浦々迄知られていた。
源叔父の船頭歌を聞きたさに、人々は源叔父の船に乗るのです。
源叔父には美しい百合という女房がいましたが、
二人目の子を産むときに亡くなってしまいます。
残された子も、水に溺れてなくなってしまい、
悲しみのあまり、源叔父は歌うことができなくなってしまいます。
そんな折、
源叔父は、「紀州」という名の乞食をしている男の子に出会います。
我が子の面影を重ねる源叔父。
ここから先は、とても切ない物語が待っています。
この作品は、ぜひとも読書会の課題図書にして、
皆さんの感想を聞きたいものです・・・。