太宰治「女生徒」は、とてもユニークなエッセイ。
- 日本文学
掲載日: 2022年12月19日
「女生徒」は、1939年に雑誌「文學界」に掲載された中編小説。
太宰の作品の愛読者である、ひとりの女性から送られてきた日記を基に創作された作品です。
3か月分にもわたる日記ですが、
これを、朝起きてから、夜寝るまでの一日の出来事にまとめ上げています。
しかも、それを彼女の一人語りで描いています。
女生徒があなたに向かって語り掛けるのです。
「あさ、眼をさますときの気持は、面白い。私はいつも厭世的だ。いやになる。どっとかたまって胸をふさぎ、身悶ええしちゃう」みたいな文章が続きます(;^_^A
これを太宰が書いているわけで、
この文章を読みながら太宰の顔が目に浮かぶと、なんだかもやっとします。
女性の朗読で聞くと、素直に効けますので是非お試しください。
さて、女生徒が朝起きてから、布団を上げて、部屋を掃除して、といった他愛のない日常風景が綴られ、その時々に思ったことが語られていきます。
そして、こんな描写が出てきます。
「結局は、私ひまなもんだから、生活の苦労がないもんだから、毎日、幾百、幾千の見たり聞いたりの感受性の処理が出来なくなって、ポカンとしているうちに、そいつらが、お化けみたいな顔になってポカポカ浮いて来るのではないのかしら」
これは、まさに太宰治自身の置かれている状況です。
こういう点に共感して、太宰は作品に仕上げたのかもしれません。
女生徒が外出し、電車に乗ると、色々な考えが頭の中を駆け巡る様子が描かれていきます。
太宰の考えなのか、それとも日記を書いた女性の考えなのか、どちらにしても、とても興味深い視点で世の中を捉えています。
この作品は、女生徒の語り口で描かれているエッセイなのではないでしょうか。