フランツ・カフカ「断食芸人」には、救いようのない絶望が描かれている。
- 海外文学
掲載日: 2023年04月11日
「断食芸人」は、1922年、カフカが38歳の時に発表された短編小説。
断食芸は19世紀のヨーロッパで実際に行われていた興業の演目です。
断食を行う芸人が日に日に衰えていく様を見世物にしたのです。
主人公は、断食芸に誇りを持っている芸人。
断食をして、次第にやつれながらも威厳を失わず、檻の中に座り続けます。
かつては、行列ができるほどの人気を誇った断食芸。
そんな芸も、目新しい演目が増えるにつれ、次第に人気に陰りが見えてきます。
そんなある日、興行主がふと忘れ去られていた檻に気が付きます。
檻に敷き詰められた腐った藁を棒でかき回すと中から衰弱した断食芸人が現れます。
「さぁ、片付けろ!」という興行主の一言で、断食芸人は藁と共に葬られるのです。
救いようのない絶望が、そこにはあるだけです。
そのころのカフカは、肺結核を患い療養と、職場復帰を繰り返す日々。
交際中の女性との結婚も家族の反対を受け難航しており、まさに悪夢を絵にかいたような境遇でした。
この境遇を逃れるため、救いようのない絶望を描くことしかできないカフカの叫びが見えるようです。