三島由紀夫「橋づくし」は、スリリングな話運びが堪能できる。。
- 日本文学
掲載日: 2022年11月25日
「橋づくし」は、1956年(昭和31年)、文芸雑誌「文藝春秋」に掲載された短編小説。
日本文学の金字塔である「金閣寺」を書き上げた直後の作品です。
当時の三島は、作家としての地位も確立し、多くの著名人との交流もあり、人生の中で最も円熟した時期を過ごしていました。
「橋づくし」は、その当時、交際のあった料亭の娘から聞いた話を基にして創作した小説です。
実際にそのような願掛けが存在するわけではないようです。
満月の夜に、後戻りをせずに7つの橋を渡ると、願い事がかなうという願掛け。
その願掛けを試みる芸者衆と料亭の娘の物語です。
願掛けには、さまざまな禁忌があります。
・後戻りをしてはいけない。
・同じ橋を二度渡ってはいけない。
・途中で、口を聞いてはいけない。
・知り合いから話しかけられてはいけない。
まだまだあります。
ひとりの芸妓が、腹痛を起こして、脱落します。
そこからが、展開が早い。
次に誰が脱落するのか、とてもスリリングに描かれています。
三島由紀夫のストーリーテリングのうまさに舌を巻きました。
特筆すべきは、芸者衆の所作の描写やセリフのリアルなこと。
太宰治にしろ、谷崎潤一郎にしろ、女性を描くのがうまい作家は、
経験豊富なことが共通していますね。