中原中也の詩「秋の夜空」には、未来への憧憬、そして暗い過去への悲しい想いが伺えます。朗読コンテンツ24
- 日本文学
掲載日: 2024年01月21日
「秋の夜空」は、1929年(昭和4年)、中原中也が22歳の時に同人雑誌「白痴群」に掲載した作品。
この頃の中也は、ダダイズムの影響は薄れてきて、宮沢賢治の作品に感化されている時期です。
それ故に、どこか寓話的な雰囲気が漂っています。
これはまあ、おにぎはしい、
中原中也「秋の夜空」(青空文庫)
みんなてんでなことをいふ
それでもつれぬみやびさよ
いづれ揃つて夫人たち。
下界は秋の夜といふに
上天界のにぎはしさ。
すべすべしてゐる床の上、
金のカンテラ点いてゐる。
小さな頭、長い裳裾、
椅子は一つもないのです。
下界は秋の夜といふに
上天界のあかるさよ。
ほんのりあかるい上天界
遐き昔の影祭、
しづかなしづかな賑はしさ
上天界の夜の宴。
私は下界で見てゐたが、
知らないあひだに退散した。
去る2023年12月27日に開催された読書会では、この詩を取り上げ、皆さんで感じたことを語り合いました。
この詩を読んで思いを馳せ、私が受けたイメージを書き記すことにいたします。
まずは冒頭。
これはまあ、おにぎはしい、
みんなてんでなことをいふ
秋の夜空を見上げると、星々が輝いていたのでしょう。
まるで宮沢賢治の童話のような文章ではないですか(;^_^A
そんな華やかで賑やかしい様子を思い浮かべる一方で
ふと、我に返ってみたところ・・・
ほんのりあかるい上天界
遐き昔の影祭、
しづかなしづかな賑はしさ
上天界の夜の宴。
私は下界で見てゐたが、
知らないあひだに退散した。
中也は、ふと自らの悲しい人生に思いを馳せてしまうのでしょう。
そんなものがなしい詩を朗読してみました。