角田光代著「対岸の彼女」にあるのは、ほのかな「闇」
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掲載日: 2020年10月07日
この作品は、10月に行われたオンライン読書会の課題図書に指定された関係で
読了しました。
この作品には、「闇」が描かれています。
それも、エグくなるギリギリの線で抑えられた
ほのかな「闇」。
主人公は、ごく平凡な主婦、小夜子。
専業主婦でいる自分に飽き足らず、
外に出て仕事をしようと考えています。
そんな折に、出会ったのが、
同い年で同じ大学を出た「葵」という独身女性。
葵が起業した会社に小夜子が務めることとなったのです。
対照的な人生を歩んできた二人の女性。
「対岸」という言葉が、少しづつ意味を帯びてきます。
そして高校時代の葵が描かれていきます。
それによって、
現在の葵の行動への共感が生まれるようになっています。
高校時代の葵は、
深い闇を抱えた同級生の「ナナコ」に出会います。
彼女は、生まれながらにして「対岸」にいた存在。
なぜ、葵が対岸に行くことになったのか・・・。
次第にわかってきます。
ボクは、本を読むのは夜の9時くらいから。
結構疲れている時間帯なのですが、
この小説は、ついつい読み進めてしまいました。
なぜか・・・。
それは、巧みな小説技法にあります。
物語が進むにつれ、次第に現れる「闇」。
どんどん深まっていく「闇」が、気になって、気になって
ページをめくる手が止まらなくなるわけです。
太宰治や、柳美里が描く闇は、実生活をもろに投影した本物の闇。
かなりエグいです。
対して、普通の人生を歩んできた角田光代氏の描く闇は、
どこか「創作」の感をぬぐえません。
いたしかたないことでしょう・・・(;^_^A