人生で必要なことはサン=テグジュペリ「人間の土地」で全部学べる。
- 海外文学
掲載日: 2022年01月29日
「人間の土地」は、1939年に出版された、エッセイ。
郵便飛行士としての体験をつぶさに綴ったものです。
この作品の中で描かれているリビア砂漠での遭難体験を基にし、「星の王子様」を後に書き上げます。
1-定期航空
飛行機乗りとして体験した数々のエピソードが描かれる本作。
アフォーリズムの宝庫です。
この章では、定期飛行に臨む頃の心情が描かれています。
先輩から受けた講習をこう語ります。
「スペインのことは教えてはくれなかった。でも、スペインをボクの友達にしてくれた。」
詩人です・・・(;^_^A
2-僚友
幾多の夜間空路を開発し、その途上での壮絶な遭難をものともせず飛行を続けた僚友たち。
そんな僚友のエピソードが描かれています。
〇何人かの僚友は、帰らぬ人となっている。
彼はこう表現する。
「自らの手で耕したあの大西洋の波間に眠ってしまった。
あたかも、麦刈り男が麦を束に結わえあげてしまうと畑にごろりと寝転ぶようにして」
僚友への深い尊敬の念がここにはあります。
〇僚友を得るには、相応の時間がかかる。
そのことを、こんな風に表現します。
「樫の木を植えて、すぐその葉陰に憩おうとしてもそれは無理だ」
何ともステキな表現です・・・。
〇幾多の僚友と生死を共にし、サンテグジュペリは、こう思うようになる。
「真の贅沢というものは、ただ一つ。それは人間関係の贅沢だ」
どんなにお金がたくさんあって、贅沢な暮らしをしても人間関係ができていないと、その人の人生は寂しいものなのでしょうねぇ。
〇幾多の僚友と生死を共にし、サンテグジュペリは、こう思うようになる。
家族や、友人との人間関係を疎かにしてお金だけを追うて働くことは
「わが牢獄を築き、灰色の銭を抱いて、孤独の自分をそこに閉じ込める結果になる」と。
これは、今の私たちにまさに言えることかもしれないですね(;^_^A
〇アンデスの雪山に不時着したギヨメ。
眠ったら死んでしまう故、彼は5日間不眠で歩き続けて帰還したという(;^_^A
病院のベッドに横たわる彼を見て、サン=テグジュペリは言う。
「君の肉体は、岩石も雪も忘れなかった」
どのような状況かを直接表現しなくてもそのすさまじさが伝わってきます。
3-飛行機
飛行機の操縦をこう表現します。
「高度計を見たり、発動機の調整をしたりで一日を費やしてもよいではないか」
「これは、登山家が山に登っていくことと同じことなんだ。同じくらい気高い仕事なんだ」と言います。
飛行機乗りとしての僚友や、自分に誇りを持っていたことが伺えます。
この作品が書かれた、1920年代当時、飛行機は飛躍的に進化ましした。
あまつさえ軍事利用され始めてしまう。
彼は言う
「なぜ、飛ぶのかということをボクらは忘れている」
そして、後段では、躍動感あふれる文章で、飛び立つときの高揚感を描き出しています。
サン=テグジュペリが飛び続けてきた意味が解ります。
4-飛行機と地球
飛行機は、大地の真の姿を見せてくれる。
長い間、曲がりくねった道に沿って歩いてきたけれども
それは、不毛の土地や、砂漠を避けて通っているからに他ならない。
でも、サンテグジュペリは、飛行することで、実は直線があるということに気が付きます。
大地の大部分は廃墟。
そして生命がぽつりぽつりと存在するに過ぎないことを発見するのです。
サハラ砂漠に着陸した際に、一つの黒い石を見つける。
こんなところに石が存在するはずはない。
彼は、こう表現する。
「林檎の木の下には、林檎しか落ちてこない。
星の下に広げられた布の上には星だけが落ちてくる」
つまり、その黒い石は隕石・・・。
詩人ですねぇ・・。
ちなみに、飛行機のイラストは宮崎駿さんが描いたものです。