Black Lives Matterが実感できるコルソン ホワイトヘッド「地下鉄道」。
- 海外文学
掲載日: 2021年06月01日
「地下鉄道」は、アメリカの作家コルソン ホワイトヘッドが2016年に発表したSF長編小説。
ピューリッツァー賞、全米図書賞、アーサー・C・クラーク賞、カーネギー賞などの文学賞を受賞した作品です。
「地下鉄道」とはなにか。
それは、奴隷農場があった南部から奴隷制度のない北部へ奴隷を逃がしていた逃亡路のこと。
奴隷の逃亡は法律で禁じられているので、隠語で示す必要があったわけです。
地下鉄のように地下に列車が走っていたわけではありません。
19世紀だし(;^_^A
でも、この小説では、実際に地下に鉄道が走っている改変世界を描いています。
ジョージアの奴隷農場で働かされていた黒人少女コーラ。
農場から逃げ出したコーラが、地下鉄道に乗ってアメリカのいろいろな州を訪れます。
彼女が訪れた州での体験が、リアルに描き出されていくのです。
その中身はと言うと・・・。
「地下鉄道:ジョージア」
主人公コーラが働く奴隷農場がここジョージアにあります。
彼女が逃げ出すに至るいきさつが描かれています。
逃げ出したくなるほどの悲惨極まりない状況が描かれていますので心して読む必要があります。
SFだと思って読み始めるとヘビーすぎて、とんでもないことになります(;^_^A
「地下鉄道:リッジウェイ」
黒人奴隷は、農園主にとっては高価な財産。
それゆえ、逃亡した奴隷を捕まえる専門家「スレイブキャッチャー」が存在します。
この章では、凄腕のスレイブキャッチャー、リッジウェイの生い立ちが描かれています。
彼も、生半端な人生を歩んでいないようです。
「地下鉄道:サウス・カロライナ」
奴隷農場から逃げ出したコーラが最初に訪れた州です。
ここでは、黒人は自由に職業も選べて、賃金ももらって、白人と同じようにきれいな洋服を着ています。
健康診断も無料で受けることができるのです。
コーラが訪れたクリニックは高層ビルの12階にあります。
エレベーターに乗り込むコーラ。
でも、待ってください。
時代は1800年初頭です。
そんなものあるハズないのですが・・・。
サウス・カロライナでの生活は、一見、幸せな生活に見えますが何かがおかしい。
黒人の子供が一人もいないのです。
SF仕立てで、架空の世界のように見せていますが実際に起こったことが織り交ぜられています。
この章で描かれているのは産婦人科の父として銅像まで建てられたジェームズマリオンシムズの行ったこと。
恐ろしいことが描かれていますので覚悟して読み進めてください。
彼女の逃亡劇はまだ始まったばかりです・・・。