泉鏡花「天守物語」その3-亀姫登場。
- 日本文学
掲載日: 2021年08月29日
ここから、グロテスクな描写が開花します。
天守閣の天井から降りている梯子より
亀姫のお供の「朱の盤」が降りてくる。
そのいでたちや
「大山伏の扮装、頭に犀のごとき角一つあり、まなこつぶらかに面の色
朱よりも赤く、手と脚、瓜うりに似て青し」
これは江戸中期に書かれた「老媼茶話(ろうおうさわ)」に出てくる化け物です。
あな恐ろしや・・・。
朱の盤が小脇に抱えているのは
「白布に蔽うたる一個の小桶」
富姫へのお土産とのこと。
中から出てきたものは「色白き男の生首」
げに恐ろしや・・・(;^_^A
恐ろしき形相の「朱の盤」が
「かちかちかちかち」と歯を打ち鳴らして脅すが、女童は怖がらない。
朱の盤、曰く
「さすがは富姫御前の禿(かむろ)たち、変化心備わって
びくともせぬは我折申す」
「へんげごころ」
これすなわち、妖怪の心とでもしておきましょう(;^_^A
「がおれもうす」
これは、私の負けです、という感じでしょうか。
さらに天守閣の天井から降りている梯子より
猪苗代城の主 亀姫が現れる。
富姫と亀姫の仲睦まじき会話を、ほほえましく聞いている「朱の盤」は
二人の会話をこんな風に表現します。
「いやまず、おなかがよくて
お言葉の花が蝶のように飛びまして、お美しい事でござる」
厳めしい風体に似合わず
なんとも優雅な表現・・・(;^_^A