泉鏡花「天守物語」その1-幽玄世界へいざなう導入部。
- 日本文学
掲載日: 2021年08月28日
「天守物語」は、1917年に文芸誌「新小説」に掲載された戯曲。
高貴な女性の凛々しさが光る極上のエンターテイメントです。
本コミュ読書会では、2021年8/30(土曜日)から10/30(土曜日)三回にわたって課題本型読書会として、この作品を取り上げます。
舞台は姫路城、天守閣。季節は晩秋。
人間が立ち入ることができない天守閣にいるのは、この世のものではない方々。
天守夫人、富姫に仕えしは侍女五人。
その名は、桔梗、女郎花、萩、葛、撫子。
秋の七草になっています。
姫路城の天守から 釣り糸を垂れる侍女五人。
魚を釣っているのではございません。
では、何かといえば、花、それも秋草だという。
餌は何かと問われれば 「それは白露」
時節柄、秋草は露をたんと欲しがるのだそうでございます。
ゾクゾクするような幽玄世界です。
ほどなくして
「釣れました」
「あれ、私も・・・」
黄と白と紫の胡蝶の群れ、ひらひらと舞い上がります。
天守から 下界に咲き誇る秋草を見ている侍女たち。
と、にわかに激しい風が吹き始めます。
「色もかくれて、すすきばかりが真白に 水のように流れて来ました」
つまり 暗雲立ち込めて暗くなり 白黒の世界になってしまったのです。
ゾクゾクする表現ですねぇ。
ここから、私たちは幽玄な世界の取り込まれていくのです・・・。
そんなこんなを語っています。↓