![泉鏡花「竜潭譚」は、幼子と共にじわじわと幻想世界へ入っていく物語。](https://honkomyu.com/wp/wp-content/uploads/2022/12/image-8.png)
泉鏡花「竜潭譚」は、幼子と共にじわじわと幻想世界へ入っていく物語。
- 日本文学
掲載日: 2021年12月07日
「竜潭譚」は、1896(明治29)年、雑誌「文芸倶楽部」に掲載された作品。
幼子がいつの間にやら異世界へ迷い込んでしまうお話。
連作短編になっています。
「竜潭譚–躑躅か丘」
姉の止めるのも聞かず、ツツジの咲き誇る丘にひとり来た幼な子。
「行ゆく方かたも躑躅なり。来こし方かたも躑躅なり。
あまりうつくしさに恐しくなりて、家路に帰らむと思ふ」
が、時すでに遅し。
ツツジのなかより飛びて来た羽虫を殺してしまう。
すると、鱗粉にでも触れたのでしょうか
「ほかほかと、かほあつき日向に唇かわきて
眼のふちより頬のあたりむず痒ゆきこと限りなかりき」
もう後戻りができないことを暗示させる幻想的な導入部です。
なにやら不気味なことが起こりそうな予感がします。
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「竜潭譚–鎮守の社」
帰り道がわからない幼子。
「日の傾くぞ心細き。肩、背のあたり寒うなりぬ」
耳を澄ますと、かすかな子供の声がする。
「もういいよ、もういいよ」
どうやら、遠くでかくれんぼをしているようです。
夕暮れ時に、かくれんぼは、とても不気味です・・・。
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「竜潭譚–かくれあそび」
読み進めるにつれ、じわじわと幻想世界へ入っていくのがわかります。
「お遊びな、一所にお遊びな」
と誘われるままに見知らぬ子供たちとかくれあそびをする幼子。
「もういいよ、もういいよ」と、声したる方をと思ふ処には誰もをらず。
一緒に遊んでいた子供たちは
いつの間にかいなくなってしまう。
ふと気が付くと顔の色白く、うつくしき人がすぐそばに立っていて
その手を懐にして肩を垂れたり。優しきこゑにて、
「こちらへおいで。こちら」
幼子は、疑いもせず、いそいそとついて行ってしまうのです。
や、やばくないですか・・・(;^_^A
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「竜潭譚-あふ魔が時」
日も暮れ、途方に暮れる幼子。
うつくしき人に言われるがままに 小さき稲荷の社の裏に身をひそめる。
ふと姉の教えを思い出す。
「人顔のさだかならぬ時、暗き隅に行くべからず
たそがれの片隅には、怪しきものゐて人を惑はす」
何かが起こりそうでゾクゾクします(;^_^