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菊池寛「恩を返す話」は、菊池寛自らが犯した出来事への後悔の想いを描いた作品です。

菊池寛「恩を返す話」は、菊池寛自らが犯した出来事への後悔の想いを描いた作品です。

掲載日: 2023年06月28日

「恩を返す話」は、大正6年に文原子「大学評論」に掲載された短編小説。
戦場で命を救われた侍が、受けた恩義の重圧に煩悶する物語です。
人から受けた恩義を生かすも殺すも、本人次第だなと考えさせられる深い作品です。

「恩を返す話」の粗筋。

時は江戸時代、寛永十四年の夏。
蜂起した切支丹宗徒の鎮圧に出向いた戦場でのこと。
成年を越したばかりの若武者、神山甚兵衛は、一人の壮漢と対峙していた。
南蛮ふうの異様の服装をしたその男に、兜越しに一太刀浴びせられ気を失ってしまう

「甚兵衛どの、甚兵衛どの」と呼ばれる声に、彼はふと自分に返った。
ひとりの若武者が自分のそばに立っている。同藩の佐原惣八郎であった。
彼が一撃を受けて昏倒したところへ、惣八郎が駆けつけて危急を救ってくれたのである。

本来なら、命を助けられた感謝の言葉をいわねばならなかった。
が、それが言えない。
甚兵衛は、惣八郎がなんとなく嫌だったのだ。

兵法の同門であるふたりは、以前試合で剣を交え、その時に甚兵衛は敗れた。
以来、いつかは目に物見せようと、甚兵衛は心掛けていた。

その相手から、恩を着たのである。

味方の陣へ戻った後、惣八郎は一切の他言はしなかった。
甚兵衛は、二重に恩を着たような心がして、さらに心苦しくなる。

甚兵衛は、一心に報恩の機会を待った。
戦場においては、惣八郎の後をつけ、一途に恩を返すことを念とした。
が、それが叶わぬうちに太平の日が始まってしまう。

そんなある日のこと。
思わぬ形で、恩を返す日がやってくるのです。
ここから先は、とても泣けるお話ですので、ぜひ、原文を読んでみてください。

「恩を返す話」の執筆のいきさつ。

一高時代の友人である佐野がマントを盗み、
その罪を自ら被り、退学させられる菊池寛。

菊池を復学させようと学長に掛け合った友人の長崎太郎。
菊池寛は、彼の努力を無駄にしたばかりか、逆恨みをしてしまいます。

菊池寛は、「小説講座」でこう記しています。
私は人から大恩を受けた。その大恩について悩んだ。その悩みから生まれた作品が「恩を返す話」である」と。

菊池寛は、吉川英治にこうも語っています。
自分は受けた恩を悪く返した」と。

ことの経緯は、wikipedia「マント事件」に詳しく書かれていますので是非ご参照を。

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