少年時代の自己を分析していく、三島由紀夫「詩を書く少年」。
- 日本文学
掲載日: 2022年12月02日
1954年(昭和29年)に、文芸雑誌「文學界」に掲載された短編です。
主人公は、自分を天才だと確信している少年。
彼は次から次へと詩を書くことができます。
彼の目の前には、比ゆ的な現実が広がっているからです。
例えば、「毛虫たちは、桜の葉をレースに変え、桃の実は薄化粧をしている」
目の前の現実が、このように変貌すると、彼は至福を感じます。
だから、彼は詩を書くのです。
が、しかし、年上の文芸部の先輩との交流をするうちに、
彼は現実の醜さを見てしまい、やがて詩を書かなくなります。
あれほど、詩を書くことに喜びを見出していた少年が、どうして詩を書かなくなるのか、
少年の心の揺れ動きが、丹念に描かれています。
三島由紀夫自身の解説にもあるように、これは15歳の三島自身のことを描いた私小説的作品。
「金閣寺」では、犯人の青年の心情を分析していましたが、この作品では自己を分析していくのです。
そう思って読んでいくと、少年時代の三島が、どのように創作に取り組んでいたかが明確にわかってきます。
もっと早く、これを読めばよかった・・(;^_^A