自由という名の地獄を描く、アンナ・カヴァン「アサイラム・ピースⅢ」。
- 海外文学
掲載日: 2022年09月27日
「アサイラム・ピースⅢ」は、I~VIIIの8編からなる連作短編の第三章。
アサイラムに収容されていた若者ハンス。
この章では、解放されたハンスの心情を描き出します。
いつもだと、敷地内の工房で作業をしている時間。
でも、今日は、作業をしなくてもいいのです。
自由になったハンスは思う。
「いったいボクはどうなるんだろう」
いざ、自由を手に入れると、どうしていいのかわからなくなり
不安が首をもたげてくるのでしょうか。
その上、外の世界では、由々しき状況が待ち受けているようで、ハンスは落ち着きません。
昨日までは、イヤでたまらなかった工房での作業。
不安な時間を過ごすうちに、その作業に専念する患者を羨望のまなざしで見るようになります。
そんなハンスに、さらなる絶望が突き付けられていきます。
最後の数行の、あまりの救いようのなさに、ボクは絶句しました。