美に魅入られていく男を描く耽美な作品。三島由紀夫「女方」
- 日本文学
掲載日: 2022年12月03日
1957年(昭和32年)に、文芸雑誌「世界」に掲載された短編。
歌舞伎などの古典芸能を少年の頃から学んできた三島由紀夫ならでは素晴らしい作品です。
美しい女方、万菊に魅せられて、歌舞伎の台本書きになった男、増山の物語。
若い万菊の、まだ発芽していない才能を このように表現しています。
「舞台に揺曳していた、雪を透かして見える炎の下萌えのようなもの」
このような華麗な文章表現は、読んでいて惚れ惚れします(;^_^A
万菊の芝居を観るにつけ、ますます魅入られていく増山。
この呪縛から逃れるには、万菊の醜い側面を見る以外にはない。
そのために、舞台裏を見ることができる台本書きとなったのです。
これは金閣寺に魅入られていく呪縛から逃れるため、
ついには金閣寺に火を放つ男の心に通ずるものがあるのでしょう。
舞台裏の万菊の姿を見るが、幻滅を味わうことはなかった。
万菊は、日常においても女の身のこなしを貫き通しているのです。
が、ある出来事に起因して
結局は、増山は幻滅を見出すことになります。
いったいどこに幻滅を感じたのでしょう。
読書会で皆さんと語り合いたいものですねぇ。