中原中也の詩「サーカス」には、中也の乗り越えてきた苦難への想いが込められています。-朗読コンテンツ23
- 日本文学
掲載日: 2023年11月07日
「サーカス」は、1929年に雑誌「生活者」10月号に掲載された作品。
中原中也、22歳の時の詩です。
22歳とはいえ、中也は様々な苦難を経験しています。
そもそも、詩を作り始めたきっかけが、14歳の頃の「弟の死」だったのです。
4年前の恋人との破局を経て、前の年には、父、謙助が死去しています。
中也の心境や如何に・・・。
中也の詩は、とってつけたような解釈は無用です。
読んだ人がどのように感じたかが正解です。
ここでは、私が受けたイメージを書き記すことにいたします。
幾時代かがありまして
茶色い戦争ありました幾時代かがありまして
冬は疾風吹きました幾時代かがありまして
今夜此処での一と殷盛り
今夜此処での一と殷盛りサーカス小屋は高い梁
そこに一つのブランコだ
見えるともないブランコだ頭倒さに手を垂れて
汚れ木綿の屋蓋のもと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよんそれの近くの白い灯が
安値いリボンと息を吐き観客様はみな鰯
咽喉が鳴ります牡蠣殻と
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん屋外は真ッ闇 闇の闇
中原中也「サーカス」(青空文庫)
夜は劫々と更けまする
落下傘奴のノスタルヂアと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
「茶色い戦争」と聞いて、セピア色が思い浮かびます。
そして、過去に起こった戦争をイメージします。
中也が経験した戦争だとすると、第一次世界大戦でしょうか。
それも含めて、いろんな辛い時期を経て、今は何とか落ち着いているんです、といった感じを受けます。
そこに持ってきてのサーカスです。
そこはかとないノスタルジックな寂しさを感じます。
汚れたテントの天井を背景に空中ブランコが揺れています。
観客はと言うと、群れて泳ぐイワシのように一斉に同じ方向を見ているのでしょう。
そして、サーカス小屋の外はと言うと、真っ暗闇。
サーカスの白いテントが「落下傘」のように見えたのでしょう。
中原中也の、そんなノスタルジックな詩を朗読してみました。
読書会を開催します。
中原中也「山羊の歌」を課題図書として、読書会を開催します。
中原中也の詩は、小難しい解説、解釈は無用です。
皆さんが読んだときにどのように感じたかが大事です。
皆さんで、心に残った箇所、わからない箇所など、おしゃべりしましょう!