朗読コンテンツ12-夏目漱石「夢十夜」第六夜(運慶が明治時代に仁王像を彫る話)は、古き時代への憧憬が描かれています。
- 日本文学
掲載日: 2023年01月15日
「夢十夜」とは。
「夢十夜」は、1908年(明治41年)に『朝日新聞』に連載された連作短編小説。
朗読にピッタリの長さの作品です(;^_^A
作家の人生をありのままに描く「自然主義文学」とは異なり、
リアルな「作り物」を旨としている漱石らしく、実に不思議なお話。
そして、ただの空々しい幻想的な物語ではなく、
生き生きとしたリアリズムにあふれています。
今回お届けする朗読は、夏目漱石「夢十夜」の第六夜です。
「夢十夜」第六夜を解説します。
かの有名な運慶が、護国寺の山門で仁王を刻んでいる、という評判を聞きつけて見物に行ってみる。
大勢の見物客が見ている中で、確かに運慶が一心不乱に仁王像を彫っています。
そして、見物客は、無教養で品のないヤジを飛ばしているのです。
運慶は、そんなヤジは意に介さずに、一心に彫っています。
やがて、彫り上がる見事な仁王像。
が、しかし・・・、
運慶は、鎌倉時代の人間です。
そして、見物人は、現代(明治時代)の人間です。
これは、いったい何が起こっているのでしょう(;^_^A
あ、そうそう、これは「夢」でした。
近代化する明治の日本を苦々しく思っていた漱石。
社会全般が自然と一体となっていた鎌倉時代。
それに引き換え、近代化で、自然と乖離してしまった現代(と言っても明治時代ですが)。
それを踏まえて、この物語を読むと、
漱石の意図するところが伝わってくるのではないでしょうか。
そんな不思議な物語を朗読と映像で表現してみました。