太宰治「竹青」は、「異世界転生もの」の原作を上回る「二次創作」です。
- 日本文学
掲載日: 2022年12月27日
「竹青」は、文芸雑誌「文藝」に1945年に掲載された短編。
中国の清の時代に書かれた怪異譚集「聊斎志異」の中の一編を基にして
太宰治の創作を加えて作られたものです。
うだつの上がらない貧乏学生が、わが身の不運を嘆くあまり、
ふと目に留まったカラスになりたいと思う。
はたして、カラスとなり果てた男の運命や如何に、という骨子の物語。
「竹青」とは、カラスになった世界で出会った見目麗しき女性の名前です。
太宰は、これに様々なエピソードを加えて、実に面白くて感動的な作品に仕上げています。
これは、今でいうところの「異世界転生もの」の「二次創作」です。
さらに、太宰は工夫を凝らしています。
原文の雰囲気を伝えようとしてなのか、折々で漢文調の文章を織り交ぜているのです。
例えば、今の生活の虚しさを感じる男の心情をこんな風に描いています。
「わが故土にいながらも天涯の孤客の如く、心は渺として空しく河上を徘徊する」
いやもう、超絶技巧とはこのこと。
オリジナルの「竹青」と読み比べると、太宰治が如何に大天才であるかがよくわかります。
天才が二次創作すると、斯くも深く面白い作品となるのです。
文豪が、人並外れた技を駆使して、古典を翻案してくれることのなんと贅沢なことよ。
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