ジョージ・オーウェル『1984年』には、日本の「今」が描かれている、ような気がするのはボクだけ?
- 海外文学
掲載日: 2026年01月31日
我が国の官僚による「公文書の書き換え」が行われて、大問題になったことは記憶に新しいことです。これが、どんな恐ろしいことに繋がっていくのか・・・。
多くの人は、事の重大さや、恐ろしさに実感が沸かなく、人ごとのように思っているのではないでしょうか。それどころか、もはや過去のこと、終わったことのようにすら思っている人が大多数なのかもしれません。
そんな人には、ぜひ「1984年」を読むことを強くお勧めいたします。
おそらくは震え上がってしまうのではないでしょうか。

『1984年』は、こんな小説です。
イギリスの作家ジョージ・オーウェルの書いた「1984年」は、今から70年ほど前、1949年に刊行されたディストピア小説。
当時の世界から見た「近未来の世界」を描いたSFです。
1950年代の起こった核戦争によって、世界は一度滅びてしまいます。その後、世界は3つの大国によって新たに分割され、「全体主義国家」として統治されます。
そこでは、どんな恐ろしい生活が待っているのか・・・。
そんな物語が描かれています。

『1984年』のあらすじ
『1984年』は、第一部から第三部までの三部構成となっています。
第一部では、この作品の舞台となっているのはどんな世界か、ということが実に160ページに渡って描かれます。なかなか話が転がらないので、退屈してしまうかもしれません。多くの読者の挫折ポイントがここです(;^_^A
でも、この舞台設定が大事なのです。しっかりと読み込んでいきましょう。
第二部では、そんな世界で、主人公が出会った女性との恋物語が描かれます。第一部で描かれた世界観が頭に入っていることで、とてもスリリングな展開が味わえます。
そして、最後の第三部。世にも恐ろしい結末が待っているのです。
それでは、読み込んでいきましょう。
『1984年』を解説します。
第一部:監視社会と真理省の正体
物語の主人公はウィントン・スミス。39歳。
彼の仕事は、勤務先の「真理省」で、文章の改ざんを行うこと。
「真理省」は、読んで字のごとく、真実を司る組織。
ただ、その真実というのは、政府の都合の悪い文章を改ざんし、すべてを政府の方針に合致したものに仕立て上げることを指すのです。
そして、この世界には「法律」が存在しません。
何事も違法ではないのだが政府がその場その場で判断して、逮捕できてしまうのです。
そして、自由に恋愛をすることもできません。
セックスは忌み嫌われる行為として人々は教育されています。
なぜなら、人を愛するという行為は、党への絶対服従の妨げとなるからです。
すべての「愛」は、絶対統治者の「ビッグブラザー」に向けられなくてはならないのです。
独裁政権が、書物を焼き払い文学作品を読めなくする理由の一つがここにあるのでしょう。
そんな暮らしを送るウィントン・スミスは、美しい女性に出会い、恋に落ちてしまうのです・・・。

第二部:ビッグ・ブラザーへの抵抗と恋
その美しい女性の名はジュリア。26歳。
恋に落ちた二人は、党に見つからないように秘密裏に逢瀬を重ねていきます。
見つかると間違いなく、即逮捕です。
そんな二人は、プロールが住むエリアに部屋を借り、束の間のひと時を過ごすことにします。
プロールというのは、人口の8割を占める労働者階級の人々のこと。
プロールは、恋愛もセックスも自由です。
それどころか、大量の娯楽、スポーツ、酒、ギャンブル何でもありです。
彼らは日々の生活に追われ、完全に思考停止しているので、娯楽さえ与えておけば、黙って服従するのです。

なんだか、思い当たることがありませんか?
そして、彼らに植えつけられるのは「愛国心」。
時折飛来するミサイルで街角が破壊され、彼らに「愛国心」が芽生えるように仕組まれています。
そんな状況の中、ウィントン・スミスは、オブライエンなる人物のもとを訪ねる。
オブライエンは、党幹部にして、党本部へ反旗を翻そうとしている人物。
ウィントン・スミスは、オブライエンの運動に参加する意思を伝えるのです。
そして、ウィントン・スミスは、オブライエンから一冊の本を渡されます。
本のタイトルは「寡頭制集産主義の理論と実践」
そこには党本部の国家運営が事細かに書かれているのです。
ジョージ・オーウェルは、ここに60ページに渡って全体主義国家が如何にして国民を統治しているかを詳細に書いています。
例えば、こんなことが書かれています。
「階級社会は、貧困と無知を基盤にしないと成立しえない」
つまり、大衆を日々の生活に追われ、学ぶこともしない状況に置くことで政治に関心を持たせないようにする、というのです。
このパートこそ、彼が描きたいものなのではないでしょうか。
ぜひ、ここだけはじっくり読んでください。恐ろしいことが書かれています。
第三部:二重思考(ダブルシンク)の恐怖と結末
第三部は、ジュリアとウィントン・スミスを待ち受けている恐るべき出来事が描かれています。
ウィントン・スミスが勤務していた省庁は「真理省」です。ここでは、報道、娯楽、教育などを管理しています。真理といいながら、世の中にある書物のみならず公文書すらも政府の意向に反するものは、書き換えています。
「平和省」では、平和と謳いながら戦争を進め、「潤沢省」では、経済問題を司り、潤沢と謳いながら庶民を貧しくしています。
まるで真逆のことを、庶民に信じ込ませる「二重思考(ダブルシンク)」がまさにこれです。
そして、ジュリアとウィントン・スミスが連れてこられるのは「愛情省」。
愛情と謳いながら、ここでは思想改造が行われています。
ここから先はぜひ、本文を読んで、背筋を個売らせてください(;^_^A

ふと、思い当たることが・・・。
第一部を読み込んだ方は、何かに気がつきませんでしたか?
全体主義国家が、民衆をどんなふうに統治しているか、こんな記載がありました。
・複雑な考えが出来ないように、言語を単純化していく。
・公文書のみならず、新聞、雑誌、書籍、 すべての不都合な文書は、政府の意向に沿って時々刻々と書き換えられていく・・。
・民衆の恐怖を煽るために、あたかも戦争状態にあることを装うべく時折、ミサイルが発射されたとアラートが出る・・・。
そして、極め付けは、
・民衆には、ゲームや映画などの大量の娯楽を与え、思考停止させてしまう。
何だか、どこかの国で実際に起こっている出来事に見えて仕方ないのですが・・・(^_^;)
今現在の私たちの世界との共通点が、あまりにも多くて、暗澹たる気持ちになる小説なのです(^_^;)

「付録」を読むと読後感ががらりと変わるハズ
第三部で終わると思ったら大間違い。実は「付録」があるのです。
そこでは、驚くべきことが語られています。
後の世の人から見て「ニュースピーク」って何だったかが微に入り細に入り語られています。
つまり、ビッグブラザーの全体主義が終わったということです。
「第三部」を読んで、最悪な気持ちになった人は、ぜひ「付録」に目を通してください。
少しは気持ちが落ち着くはずです(;^_^A
読書会の課題本として「1984年」は何度も取り上げられています。
その度に新たな発見がある作品です。



