カズオ・イシグロ著「日の名残り」は、小説も、映画も大傑作。
- 海外文学
掲載日: 2018年07月09日
小説の実写化は、得てして全くの別物になってしまい、
観たことを後悔する羽目になることがほとんどです。
「日の名残り」は、その例外中の例外。
小説と映画の、双方が補完しあっています。
映画では描ききれなかったエピソードの数々が、小説では描かれていて、
物語を、より深いものにしています。
逆に小説では、読み取れない執事スティーブンスの揺れ動く心情を
映画だと名優アンソニー・ホプキンスが、その表情で表現してくれます。
それゆえ、映画と小説の両方を見ることで様々なことが浮かび上がってきます。
スティーブンスとミス・ケントンのお互いを想う心情しかり、
ダーリントン卿を敬愛するスティーブンスの心情しかり。
そして、土屋政雄氏の翻訳が、すばらしいです。
「翻訳」感が全くない、ごく自然な日本語ゆえ、
何の違和感もなく、すらすらと読めてしまいます。
まるでカズオ・イシグロ本人が、日本語で書いたかのようです・・・。